ここまでか 格安セットの オリオンも (令和TNK M42撮影)


こんばんは。玄です。失意の中です(^^;

早速ですが結果を出しておきます。これをどう見るか、人それぞれかもしれませんが、「これでいいぜ!」と思う方はいないと思います…。

スタークエスト 13cmF5で撮影したオリオン大星雲
FUJIFILM X-T1 SkyWatcher スタークエストP130N(750mmF5.0 30secx8 ISO1600)
アップグレードキット ノータッチガイド YIMGでstack+PaintShopProとIrfanViewで調整

これまで、「令和TNK」のとりあえずのシリーズとして、安価に変えるセットとしてSkyWatcherのスタークエストP130Nを使ってきました、というか、そもそも眼視用のセットを使って簡単に?撮影出来ないものかと色々あがいてきました。なんせ、2021年8月の時点で28,680円(2022年2月現在では40,700円)、プラス、モータードライブ(アップグレードキット)で7,130円(これは価格変わらず)。合計35千円ほどという激安品です。ヘタな赤道儀だけとか、レンズだけとかよりも安いレベルですから、これで撮影できるなら、一般の方の敷居もぐっと下がるはず…と考えていたんですね。まぁ、最初からちょっと無理があるんぢゃね?とは思ってたんですが…(^^;

購入、組み立てまでは比較的スムーズに行ったものの、
途中、ピントが合わないのでミラーセルを自作して前に出したり接眼部の光軸が合わないのであれこれ調整したり
と、あれこれ苦労しながらも、とりあえず筒は撮影できるレベルにまで持ってきていました。しかし、問題は赤道儀です。モータードライブがあるので追尾はできるはずなんですが、実はちゃんと動くようになるまでちょっと苦労しました。

スタークエスト赤道儀モーターを付けた状態

・まず、赤経微動が渋いんです。

そもそも、赤緯微動は割とスムーズで、かつガタもほとんど無かったのですが、赤経微動は、ガタが大きく、かつなんだかスムーズではありません。ウォームネジを調整するようなネジが一つあるのですが、これを締めたり緩めたりしても、あまり変わりません。動きとしては、少し硬さがあって、少し回していくと何かの拍子に「スルッ」と動くような感じがあります。かと思えば、硬くてなかなか回らないようなことも。モータードライブを回していてもその辺が顕著で、全然動かないこともあれば、突然増速して星を追い越していくこともあります。こりゃあ、アカン…。

スタークエスト赤道儀ウォームネジがかろうじて見える

この渋いのは、とりあえずグリス不足ではないかと踏みました。可能な限りバラしてウォームギアを見ると、その両端にはグリスを塗ったような跡はありますが、ホイールネジはなんだかグリスがなさそうです。そのままでは完全にバラすことができない構造なので、とりあえずつまようじにグリスを取って、それを隙間から差し込んでウォームに塗ってみました。位置を変えて何度か塗り込み、その後で2回転ほど微動で赤経を回してなじませます。

…なんということでしょう。

あれほど渋かった微動が、驚くほど?(いや、ちょっと大げさか?)スムーズに回るようになりました。引っかかるイメージはほぼなくなり、モーターもスムーズに回っている気配です。しかし、問題はこれだけではありませんでした。

・ウォームネジの固定が緩んでいました。

これは、先にも少し話を出しましたが、購入当初から気になっていた赤経側のガタです。赤経微動にガタが結構あったんですね。赤緯側はほとんど無く、微動ハンドルを動かしても、リニアに反応してくれます。が、赤経側はスカスカなイメージで、普通にウェイトを持って動かしてもガタガタ言うような状況でした。ガタは微動ハンドルで半回転近くあったでしょうか。

なので、クランプを締めてモータードライブを駆動しても、駆動力がかかるまでに最低でも5分、ヘタしたら10分近くかかるんじゃないか?と思わせる状態です。ただでさえ増速ボタンとかのないドライブなので、これは致命的でした。

ウォームとホイールのかみ合わせを調整するネジらしきものはあるので、そのネジ(ウォームに垂直に当たるネジ)を調整してみたのですが、かみ合わせが変化するだけみたいで、ガタそのものは全く変わりません。これは…違う…?

他に何か調整か、固定か、何らかのネジがあるはず…と探し回りましたが、なかなか見つかりません。最終的に見つけたのが写真の軸に並行のリングネジでした。どうやら、このネジでウォームを固定しているっぽい感じです。しかし、この手のネジは簡単には回せないのが普通ですよね。カニ目レンチなんか持ってないし、持っていたとしても、この狭い所に入る気配はありません。

スタークエスト赤道儀ウォームネジの固定

専用のパイプ型の工具でも無ければ、こんなもん締められんよなぁ、と半ばあきらめつつ、精密ドライバーを突っ込んで「爪」の部分をいじってみます。

…なんということでしょう。

ほとんど力を入れていないのに、そのネジがするすると回るではありませんか。

…締まってなかったんかーい!

心の中で盛大にツッコミを入れながら、ドライバーで締められるだけ回して締めていきます。少しドライバーに力を入れて押さえれば、簡単には緩まないぐらいまで締めこむことができて、かつ、ガタが相当に小さくなりました。ここだったのか…。うう。

さて、ここまで来れば、後はモーターがきちんと追尾してくれれば撮影はできるはずです。そして最後の難関は…

・クラッチネジを緩めすぎて斜めに入ってました

このモータードライブ(アップグレードキット)なんですが、設置そのものは難しくありません。ただ、クラッチがネジ式で、締め込みや緩めるのをどれぐらいすればいいのか、今ひとつわかりにくいんですね。何度かテストして追尾撮影もしようとしたのですが、追尾はするものの速度がまるで足りなかったりと、妙な動きをするようになりました。

これは変だ!?と思って、11月の小海星まつりに行った時に、サイトロンの方に持っていって聞いてみました。担当の?方は、少し回してみて「ああ、これはクラッチが外れて斜めに入ってますね。バラしてクラッチネジを正しく入れなおさないといけませんね」という話でした。え?斜めに入ってる?

そもそも、このクラッチはネジを締め込んでクラッチON(Lock)、緩めてクラッチOFF(Unlock)なんですが、締め込むときもカチッとしたものがあるわけではなくて、じわっと締め込んで「この辺で固定されたかな?」と「感じる」しかないんです。ロックされたと思っても微動反動を回してみるとまだ結構回るとか、なかなか難しいところがあります。緩めるのもかなり緩めないとクラッチが外れないイメージなので、気が付いたら必要以上に緩めていたのかもしれません。

家に帰ってからこのクラッチネジを確認してみると、確かに少しナナメに入っていたかもしれません。バラしても完全に外すことはできなかったのですが、完全に外れた状態から、しっかり正対させてねじ込むと、どうやらきちんと入ってくれたようです。

改めてクラッチの状況を確認してみると、ねじ込んできちんとロックされる状況から、4回動かす(1回で1/3回転ぐらいなので、1.3回転ぐらい?)で外れる、ロックされるというのが切り替えられるようです。これ以上回してしまうとねじ込み過ぎたり、ネジが外れたりすることがあるようです。適正にネジが正対していて、ロックされれば、動力伝達もきちんと動作して、そこそこしっかり?追尾される状況になりました。

さて、ここまで来てようやくまともな撮影です。ここまで鏡筒主体で改善を加えてきたのですが、いよいよ赤道儀も活躍できます。極軸設定については、極軸望遠鏡が無いのできちんと合わせきることはできないのですが、極軸側に目を当てて、なーんとなく北極星をにらんで、それらしき方角には合わせました。実際、これでしばらく星を見てても、それほどずれる気配はありません。よし!撮影ぢゃ!

撮影中のスタークエスト2022年2月

撮影に当たっては、狙えるものがある程度限られます。そもそもこの日は半月過ぎの月が出ていたので更に厳しい状況でしたが、スタークエストP130Nに付属のファインダーはレッドドットファインダーになります。これを使って導入できる被写体は、基本、はっきりと眼視できるものに限られます。2等星と重なっているとか、もしくはすぐそばとか…。まぁ、おのずとM42になるわけですが、今回は近くに月があっただけで、M45を狙うという方法もあったかもしれません。テストの段階ではh・xを狙ったこともありました。

月明かりもあるのと、極軸の精度などから露出は控えめ、30秒とします。M42は明るいのでこれでも十分写るはず…と、ようやくというかなんというか、撮影ができました。ピントが出ない問題から始まって、モータードライブの問題など、我ながらよくここまで頑張ったな、と思いました。

…が、世の中そんなに甘くありません(またかよ)。先の完成画像を見てもらえればなーんとなく想像がつくと思いますが、とにかくブレブレというか、ガイドできていないんですね。極軸は多少甘くとも、30秒露出ならピリオディックモーションの影響も含めてそーんなに変に葉ならないだろうという目論見は、見事に打ち砕かれました。

これが、一定方向のズレなら、まだ極軸の調整やモーターの調整でなんとかなるかも、と思うのですが、縦横入り混じったランダム…?なズレです。今回、YIMGで無理やり合成してますが、もう正直ここまで…と諦めました。本来なら、ここから精度アップの調整や、被写体を変えての撮影、コマ収差の調整方法の検討…などなどを進めようかと思ってたんですが、いやはや、それどころではありません。まぁ、そもそもの赤道儀がそれほど精度のあるものではないのでしょうし、まだどこかにガタがあるのかもしれません。

とにかく、これ以上色んなところをつつきまくっても精度向上を見込みにくい事、この時点で既に一般の方が対応できるレベルを超えて改造や調整をしまくっている件、こうした背景を勘案して、このスタークエストによるTNKは、これにて終了ということにします。

いや、まぁ、悪い機材ではないんですよ。光軸の問題はありますが、眼視で使う分には、とりあえず問題は少なそうですし、暗い夜空の下でディープスカイを軽く堪能する分には、安価で良い機材だとは思います。

ただ、こうした安価な機材にありがちな「使う人の技量を要求する」というのは、避けられなかったのと、TNKで撮影に使うには、やはり無理があった、ということです。

今になって思えば、この13cm反射にしてしまったのも失敗かもしれません。ピントや光軸の件を考慮すれば、7cmぐらいの屈折にしておけば、焦点距離や色収差の問題はあるにせよ、もっと気楽に、かつ重量や価格も抑えられて購入できるので、便利に使えたかもしれません。

実際、昨年11月の月食の時には、ウェイトも付けずに8cmマクカセを乗せて、眼視用としてすごく便利に使えました。7cmぐらいまでの短焦点屈折ならば、同様に手軽に便利に使えそうな気はします。後は三脚がちょっとかさばるので、この辺に工夫代が残りますね。


…ということで、超安価なスタークエストを使った令和TNKは、おしまい。
この、残ったスタークエストをどうするよ?という問題はあるんですが、こんなの、誰も買ってくれそうも無いので、しばらくはお蔵入りなんだろうなぁ。買値の半値+送料ぐらいで買ったげるよ、という奇特な方がいらっしゃれば検討しますが、基本、初心者お断りな機材ですので、そこはご注意ください。


色々あって遠回りしてますが、令和TNKは、一旦振出しに戻ります。令和TNKにふさわしい機材は何になるか、改めて検討したいとは思いますが、実は次なるチャレンジは既に考えていたりします。多分、皆さん想像している通りになるんぢゃないかとは思いますが、うまく行くかどうか、それはお金のかけ方次第…?


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